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姉は全ての状況と殆どの能力を失い、地に落ちた。
弟は気が触れ縁者を斬り伏せ、人の道から外れた。

どこからどこまで夢の中かも分からない、僅かな安寧の中、傷を舐め合い這い蹲る。
これは哀れな姉弟のものがたり。
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頭が痛い。
エイリアス(分身)でも頭が痛くなるんだなと、額を押さえつつもそんなことを考えられるうちは、さして大事では無いのだろう。
大地にくっつきそうな頭を無理矢理に引きはがし、傍らの弟に捉まりながらどうにか立ち上がった。


エルズェが騒ぐような感覚があり、同時に大地が脈動を始めた。遠くの海で大きな飛沫が上がっていた。
何かが隆起して出現したのだ。
いつまでもそこにいると海岸にまで波がやってきそうだったので、弟の手を引いて小高い丘まで少し歩いた。
危機感はあまり無かった。
どこか自暴自棄になっている感覚があるのかもしれない。私も、弟も。


歩きながら、私は何処か別の風景を同時に見ていた。
別の風景と言っても、この島には間違いがない。空も地も海も赤いなんて、この島以外に私は知らない。
珍しく心配そうに私を覗き込む弟の顔を見ながら、ここには居ない奇怪な異形の娘の姿を見ていた。
誰の視点なのだろう。疑問はすぐに頭の痛みで曖昧になった。

おそらくはマナが枯渇して消えていく異形の娘、差し伸べられる幾本もの手。声。意思。
消えていく者を見捨てない救済。余程因果律から愛されていたのだろう、あの娘は。


―――もし。シュガのマナが枯渇したらどうなるのだろう。同じように消えていくのだろうか。
それならそのマナ依存している私も消えるのだろうか。神属でも人間でも、ひょっとしたら生命体ですらない私も、この地の法則に同等に扱われるのだろうか。

シュガが消えていくのなら、私はシュガを救わなければ。助けなければ。
きっとそれが私の…… 私の役割だ。誰に聞いたわけでもないが、何となくそんな気がしている。
姉だから? 血縁だから?
それだけなのだろうか。もしかして他に理由があるのだろうか。それでも―――
それでも。私に科せられた使命を果たそう。この歪んだ赤い地で。


















そして私には救いの手は決して訪れないのだ。
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