姉は全ての状況と殆どの能力を失い、地に落ちた。
弟は気が触れ縁者を斬り伏せ、人の道から外れた。
どこからどこまで夢の中かも分からない、僅かな安寧の中、傷を舐め合い這い蹲る。
これは哀れな姉弟のものがたり。
弟は気が触れ縁者を斬り伏せ、人の道から外れた。
どこからどこまで夢の中かも分からない、僅かな安寧の中、傷を舐め合い這い蹲る。
これは哀れな姉弟のものがたり。
あのかべがでてきてから お姉はちょうしがわるい で
すこ゛い疲れた いる みたい
それでもなかなくなった よかった あんまりないているのはみたくない
すこ゛い疲れた いる みたい
それでもなかなくなった よかった あんまりないているのはみたくない
かべがどんどんそだって おれ達にむかってやってきた
このままだとつぶされるのかとおもったけどそれはしかたないのかもしれないなあとかぼうっとかんがえていたらお姉がおれの手をひいてあるきだした丘の上に
島の中心をめざしていどう。まわりであわてふためいたさつりくしゃたちや、動ぶつたちが、しずむふねのねずみみたいにぞろぞろとあるいていたぞろぞろぞろぞろ
しねばいいのに
みんな
しねば
し
しし
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
死死
死
死ねば
皆
死ねばいいのに。
死ねばいいのになんて、そんな莫迦なこと。
誰だ、そんな事を。
幾らこんな最果ての地だからって、言って良いことと悪いことがある。
知らず入り込んできた思念に、私は一人嫌な気分になり、歩を止めた。
尤も、そんな連中は多分大量にいるんだろう。この地には。
それにしても酷い。
最果ての地だからって、これは予想を大きく上回る。
死ぬ間際の者が見る夢。
単に眠っているものの悪夢。
死者の魂が流れ着く場所。
様々な様相を呈してはいるが、ここが俗に現世とあの世との狭間にあるということだけは分かる。
川の淀み。或いは中州。
そこでは幾多の冒険者―――殺戮者と言った方がいいだろうか、彼らが延々と殺し合い、この狭間に残るために生氣を奪い合っていた。
何故?
何のために?
私には解らないが、ひょっとしたらそういう宿命なのかもわからない。
この狭間に入り込んできた者には総てそういう脅迫観念に近い衝動が植え付けられるのかもしれない。
異邦者である私には関係のないことだけれども。
そして彼らはその場から脱落し、「死」へと流れていったり、悪夢から目覚めたりするのだろう。だが―――
その生氣、ここでいう「マナ」が尽きた時、酷い影響を周囲に撒き散らして縁者諸共に砕け散るであろう輩が居る。
長い赤毛の剣士。私の居る場所では強い意志を持つ剣士だったが、「ここ」ではどうなのだろうか。
その男の名は、シュパーギン=アルグリフ。シュガ。私の実弟だ。
正確にはブランチ。枝の存在。分岐した枝の存在。
物事には常に「if」が存在する。
例えばある人物が、卵を持って歩いており、そのまま帰宅したとする。
だが途中で「もし」卵を割ってしまったらどうなるか。
帰宅しないかもしれないしそのままするかもしれない。或いは引き返すかもしれない。
帰ったとしても、その卵が無いようではその後が違うかもしれないし、大差がないかもしれない。ほんの僅かかもしれないが、しかし確実に違う未来が成されるのだ。
枝分かれした未来、本来の未来と違う枝先。
本来なら分岐が大量にあったとて、全く問題はないはずだ。そうあるべきものなのだから。
ただ、枝先がここに連結してしまったのは全くの予想外だった。
こんな場所から更に分岐してしまうとどうなるか、考えたくもない。
だから私はやってきた。「腐った枝」の中心にある、「If」の実弟をどうにかする為に。
最悪剪定(せんてい)しなければならないのだけれど、どこから剪定していいものか、それより前に「剪定すべき箇所」を見定めなければいけない。剪定自体をするかどうかも分からないし。
骨が折れる。
けれど、それが私に課せられた定め。私が選んだ定め。
救済衝動を持つ半神の定め。
救済と言っても、まだ半人前の私には縁者しかそれをなし得ないけれど。血縁やそれに連なる知己。その程度。
(幸いというか偶然というか、出くわした異形の娘の浄化は、意外にも易いものだった。だが、それは浄化のみに限ってだ。それ以上の根深いところまでは関われない。関わってはいけない)
この地に降りたのはつい先程だ。パワーバランスを乱さぬよう、水面にさざ波を立てないような慎重さで、私はどうにか形状を固定した……つもりだ。
さて。愚弟を捜さなければ。もう少し気張れば簡単に見つかるとは思うけれど、それはこの地のバランスを大いに狂わせることになる。
『……何や、面倒なことになってへんとええけど……』
思わず発した肉声に足元の砂が反応し、一握りほど瞬時に溶け、ガラス質に変化した。
こんな些細なことにも注意しなければならないのか……。
このままだとつぶされるのかとおもったけどそれはしかたないのかもしれないなあとかぼうっとかんがえていたらお姉がおれの手をひいてあるきだした丘の上に
島の中心をめざしていどう。まわりであわてふためいたさつりくしゃたちや、動ぶつたちが、しずむふねのねずみみたいにぞろぞろとあるいていたぞろぞろぞろぞろ
しねばいいのに
みんな
しねば
し
しし
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死死
死
死ねば
皆
死ねばいいのに。
死ねばいいのになんて、そんな莫迦なこと。
誰だ、そんな事を。
幾らこんな最果ての地だからって、言って良いことと悪いことがある。
知らず入り込んできた思念に、私は一人嫌な気分になり、歩を止めた。
尤も、そんな連中は多分大量にいるんだろう。この地には。
それにしても酷い。
最果ての地だからって、これは予想を大きく上回る。
死ぬ間際の者が見る夢。
単に眠っているものの悪夢。
死者の魂が流れ着く場所。
様々な様相を呈してはいるが、ここが俗に現世とあの世との狭間にあるということだけは分かる。
川の淀み。或いは中州。
そこでは幾多の冒険者―――殺戮者と言った方がいいだろうか、彼らが延々と殺し合い、この狭間に残るために生氣を奪い合っていた。
何故?
何のために?
私には解らないが、ひょっとしたらそういう宿命なのかもわからない。
この狭間に入り込んできた者には総てそういう脅迫観念に近い衝動が植え付けられるのかもしれない。
異邦者である私には関係のないことだけれども。
そして彼らはその場から脱落し、「死」へと流れていったり、悪夢から目覚めたりするのだろう。だが―――
その生氣、ここでいう「マナ」が尽きた時、酷い影響を周囲に撒き散らして縁者諸共に砕け散るであろう輩が居る。
長い赤毛の剣士。私の居る場所では強い意志を持つ剣士だったが、「ここ」ではどうなのだろうか。
その男の名は、シュパーギン=アルグリフ。シュガ。私の実弟だ。
正確にはブランチ。枝の存在。分岐した枝の存在。
物事には常に「if」が存在する。
例えばある人物が、卵を持って歩いており、そのまま帰宅したとする。
だが途中で「もし」卵を割ってしまったらどうなるか。
帰宅しないかもしれないしそのままするかもしれない。或いは引き返すかもしれない。
帰ったとしても、その卵が無いようではその後が違うかもしれないし、大差がないかもしれない。ほんの僅かかもしれないが、しかし確実に違う未来が成されるのだ。
枝分かれした未来、本来の未来と違う枝先。
本来なら分岐が大量にあったとて、全く問題はないはずだ。そうあるべきものなのだから。
ただ、枝先がここに連結してしまったのは全くの予想外だった。
こんな場所から更に分岐してしまうとどうなるか、考えたくもない。
だから私はやってきた。「腐った枝」の中心にある、「If」の実弟をどうにかする為に。
最悪剪定(せんてい)しなければならないのだけれど、どこから剪定していいものか、それより前に「剪定すべき箇所」を見定めなければいけない。剪定自体をするかどうかも分からないし。
骨が折れる。
けれど、それが私に課せられた定め。私が選んだ定め。
救済衝動を持つ半神の定め。
救済と言っても、まだ半人前の私には縁者しかそれをなし得ないけれど。血縁やそれに連なる知己。その程度。
(幸いというか偶然というか、出くわした異形の娘の浄化は、意外にも易いものだった。だが、それは浄化のみに限ってだ。それ以上の根深いところまでは関われない。関わってはいけない)
この地に降りたのはつい先程だ。パワーバランスを乱さぬよう、水面にさざ波を立てないような慎重さで、私はどうにか形状を固定した……つもりだ。
さて。愚弟を捜さなければ。もう少し気張れば簡単に見つかるとは思うけれど、それはこの地のバランスを大いに狂わせることになる。
『……何や、面倒なことになってへんとええけど……』
思わず発した肉声に足元の砂が反応し、一握りほど瞬時に溶け、ガラス質に変化した。
こんな些細なことにも注意しなければならないのか……。
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