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姉は全ての状況と殆どの能力を失い、地に落ちた。
弟は気が触れ縁者を斬り伏せ、人の道から外れた。

どこからどこまで夢の中かも分からない、僅かな安寧の中、傷を舐め合い這い蹲る。
これは哀れな姉弟のものがたり。
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■  08/20  15:炎の半身  ■
とうとう赤い赤い天の光も遮られ、この島は島で無くなった。
壁が迫ってくる。
生き物のように意志を持ち、軟体動物のように緩慢に、けれど確実な早さで。
轟音を立てて地を削り、海は飲み込まれ、森は抉れ。
きっと義妹の首の墓も押し潰されてしまったのだろう。
あの魔法陣にいた病んだ不行雑草も、きっと壁に破砕されたに違いない……。

巨大な生物の腹の中に居るような感覚だ。むしろ本当にそうなのかもしれない。
私達は溶かされてしまうのだろうか、潰されてしまうのだろうか。
圧死なんて、きっと安らいだ死に方じゃない。すごく痛くて、凄く苦しい。

いやだ。
嫌だ嫌だ。
弟が、シュガが死んでしまうなんて嫌だ。
シュガは生きなければいけないのに、苦しみながら死んでいくなんて。
血の入った革袋みたいに潰されるなんて。

生きて、償いをしなければいけないのに。
殺された両親、義妹、腕と片目を奪われたもうひとりの弟に。

私の弟なのに。大事な弟なのに。
同じ胎内、同じ羊水の中に居た、私の弟。

私の弟。

弟。

そう、もう一人の、弟。
クルツ。クルフェルト=アルグリフ。

私は彼を知らない、けれど彼は私を知っている。
あんなに酷いことをされたけど、シュガを本気で殺そうとしているけど。けれど。
わかる。彼は本当に私の弟なのだと。
直感なのか、血の為せる業か。彼も昔は、陽気なはにかみ屋の青年だったはずだと。


ねえ、止めよう。もう止めよう。
同じ血を分けた姉弟じゃない。死んじゃだめだ。二人とも死んじゃだめだ。
殺し合ったって、誰が満足する。誰が得をする。
そんなのは、この赤い大地の―――









―――思考が強く流れ込んできた。見えない管で頭の中が繋がっているように。
酷く哀しい、狂気に近い、でも狂うことの出来ない、そんな痛み。
赤い砂礫が舞うこの閉じたような空間に、ひりつくような戦慄きが。

そうか、近くに居るのか。
私の分け身、影、もうひとりの私が。

ざり。血を粉にしたような土を、革の靴で踏みしめた。
熱い。
本当に血の土で作られているのかもしれない、この島は。










―――思考が強く流れ込んできた。見えない管で頭の中が繋がっているように。
酷く熱い、神気に近い、でも完全な神族ではない、そんな焔。

弟たちの為に何が出来る?
この手で何を為せる? 何を残せる?
救わなければという衝動は強いのに、私では何が足りない?










私の分身。私自身。
弟たちの絶望を一身に受けて生まれたエイリアス。
彼女は野に放たれた山羊なのだ。
罪と業を一身に背負わされる、贖罪の山羊。

待っていて。
出来るだけ急いで私は私の元に行く。
私を私に還すため。
私の業は私が受ける。













スケープゴート。贖罪の山羊。
それが私の役目―――。

それなら。
涙を流すのが、泣くのが、鳴くのが私の役目だというのなら。
私自身が冒した禁忌も役割のうちなら。

何度でも祈ろう。何度でも涙を流そう。
痛みには慣れた。陵辱にも慣れた。絶望にも慣れた。
それが弟たちを、この地の縁者を救う手だてならば。
私のちからでは全てとはいかないけれど、業が私に集まればいい。
集まった業は、きっと本体の「私」の焔が浄化してくれる。あの異形の娘を清めたように。

剣鬼と化したシュガが、憎しみの暗い焔に身を焼くクルツが。
壁に萎れそうな人たちが。
どうか笑顔を取り戻しますよう。


緩慢に迫る壁すら目に入っていないように、弟たちは隙あれば殺し合いを始めていた。
それを見ていたら、枯れたと思っていた私の涙は、後から後から溢れて止まらなくなった。
涙は地に落ちることなく蒸発していく。自分でも泣き喚いているのか、声を殺しているのかも分からない。

―――気がついたら、シュガが居た。
砂の上にへたり込んだ私を、後ろから座って抱きすくめている。

―――クルツも居た。
狂気の暗い焔の消えた苦しそうな顔で、私の前に跪いて手を取り、頬を付けていた。

斬り合いはしていない。
そうだ、それでいい。
やっぱり哀しくて涙は止まらないけれど、この身を捧げることで争いが止むのなら、それでいい。


赤い大地の膿よ、私に集まれ。

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